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見ても何にもためにならない写真日記だよ


by toushirouEX
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万年筆との再会

 急に万年筆のことを思い出した。

 この20年来万年筆というモノを使うなど使うということはまったくなく、専ら自分が使いやすいと感じるボールペンを探して使用していたのだが自分の少々強い筆圧にフィットしてくれるお気に入りものに出会うことはなかなか無い。

 それでも現在はパイロットのDr.グリップというヤツが自分には比較的相性がいいようであるので替えインクを調達しながら使い続けている。

 そうそう、ここまで書いてきたらようやくきっかけを思い出した。 そろそろ年賀状を書かなければいけないと思っていたのだった。

 この時期、来年の年賀状はどんなデザインのものにしようかとあちこちネットでデザインテンプレートを物色するのが年末の常となっているのだがいろいろ考えた末、結局はまたお決まりの『時間切れ』になり切羽詰まってありきたりの当たり障りのないデザインに落ち着き、年末ぎりぎりセーフ・・・というのがぼくの正しい年末のコースとなっている。

 それでもせめてもの拘りとして親しい友人や本当にお世話になった人たちには無機質なプリンターから打ち出される活字の他に何か一言、たとえミミズののたくったような字であっても何かを書き加えてみたいと思っている。

 今年はそんなコメント入りの年賀状を何枚くらい書かなければならないのかなと考えている時、不意に「万年筆で書いてみたい」と思いついたのだった。

万年筆との再会_e0132718_1456761.jpg


 今、この文章を珍しく下書きとして万年筆を使って書いているのだが思うに万年筆というのは現代の筆記具の中にあってまさに『絶滅危惧種』なのかもしれない。

 だいたい手書きの文章を目にすること自体が以前に比べ大いに減って生きている。確かに誰でもキタナイ癖字で書かれた書かれた文章を見るよりPCから打ち出されたキレイナ文字を見る方が遥かに読みやすいし、書く方も自分の書くへたくそな字のコンプレックスに悩まされることもないので書き手にとっても好都合である。

 それでもメモをとったりある種の書類を書いたりする時には手書きをするのだが、実際、その時に使用する筆記具の割合は僕の分析によれば大人の場合82.2%はボールペン、10.9%は鉛筆ないしシャーペン、5.1%がフエルトペン、1.6%が筆または筆ペン、残りわずか0.3%が万年筆となる。

 割合は少ないながらもフエルトペンははっきりとした比較的大きな文字を書くときに使われるし鉛筆は書き直しをしたいとき使われる。また、毛筆はかなりコアなものになりつつあるが今でも仏祝儀のときにその活路を見出すことができる。

 しかるに万年筆はというとこれはもう使い手のこだわりにしか生き続ける道はないのではなかろうか?

 万年筆は筆記具としてはとにかく手間がかかって気難しい奴だと思う。第1に最大の彼らの欠点は水に弱いということだろう。せっかくこの万年筆を使って時間と根気を労して書き上げた書類もひとたび水に濡れてしまえばその文字は醜くにじんで使い物にならなくなってしまうし、インクはすぐ無くなる、また、誤って床に落とせば周囲にインクが飛び散り落としたことでの自分への怒りを一層増大させる結果となる。また何よりそのもの自体の価格が一般的に高価でありその値段は高いものでは数十万にもなるという他の筆記具に比した決定的な欠点が存在する。

 さらにその形態も他の筆記具に比してイカツイものが感じられ、高価なものはそのペン先に美術的彫刻などが施されていて書き手に対してあたかも

「さあ、俺を使うならこころしてかかれよ!」

と暗に威圧するような雰囲気を放っているように感じられるのだ。

 言うならばボールペンは「そんなに気を使わないで。気楽にコロコロしてくれればいいのよ。」というような近所に住む気の良いミヨちゃんであるのに対して、万年筆はデートに行くにしても服装に気を使い、どこのレストランで食事をし、どんなことを話題にしようかなどと綿密に計画をたててから出かけなければいけない目黒区柿の木坂在住の白鳥麗子さんのような存在なのかもしれない。

万年筆との再会_e0132718_14564062.jpg


 話はだいぶそれてしまったが・・・

 年賀状の思案中に急に万年筆のことを思い出した僕は家の2階に上がりずっと長い間開けもしなかった机の引き出しをガサガサと探っていたが、思いもかけず大学1・2年のころまで使っていたモンブランを見つけ出した。どうせあるわけないだろうとあきらめ半分に探していただけに思いもよらぬ成果は大きな喜びだった。

 この万年筆は僕が高校生の頃お年玉で買ったものだ。それはモンブランといってもプラスチック製の廉価版、安物ではあったがそれでもやっぱりモンブラン。

 当時は万年筆を使うこと自体が妙に大人じみているように思え欲しくて欲しくてたまらなくなり結構覚悟をして購入したように記憶しており、そのボディーにはローマ字で僕の名前が刻印してある。

 それから30年以上経った今、キャップの安っぽい金色のメッキは少々銅色っぽく変色してペン先には乾ききったインクが黒々と固くこびりついてはいたが、水で洗ってみると何とかまた輝きを取り戻し、吸入式のインクタンクもまだ使用に耐えるように思われた。

 昨日の昼休み、午前の仕事が早めに終わったので車で15分程の卸売団地にある文具問屋に出かけた。万年筆用のインクを買うためだ。

 探しているのはペリカン社製のボトルインクで色はロイヤルブルー。僕にとってはどうしてもこれでなければいけないのだ。
 
 そもそも高校生の時、万年筆が欲しいと思った理由の中にインクの色に惚れた?というのもあったのだ。

 当時、英語の担当だった杉沢という先生がモンブランを使っていた。その先生の書いた文字は明るいブルーで他の人のインク(たとえばパイロットのブルーブラックなど)とは明らかに色合いが違っており、その文字の色を見ただけでこの文章は杉沢が書いたものだということがすぐに判った。そのインクがペリカンのロイヤルブルー#4001だと判明したのはある時、職員室の彼の机の上のインクボトルを見た時だった。

 はたして今でもそのインクが存在しているのか少々不安であったのだが、文具店の店員に聞いてみると彼女は棚の中を捜し1本のボトルインクを探し出してくれた。今でもあったのだ!これで30年前に戻れるような気がして僕はとても嬉しかった。

 いま、この文章を書くために久々に万年筆を走らせている。内部にこびりついた古いインクのためか文字の色は少々本来のものより黒っぽいが書き進めるに従って徐々に明るい青に戻りつつあるようだ。

 先ほども触れたが僕は筆圧がかなり強いのでボールペンで文字を書くとペンが滑りすぎてどうもしっくりこないのだが万年筆はスムースすぎるボールペンに比べペン先の弾力が強い筆圧を吸収してくれ抵抗感があり紙と擦れ合う感じ、書くとき紙に引っかかる感じがすごく具合がいい。

 これなら年賀状にいい一言が書ける?様な気がする。



 
by toushirouEX | 2008-12-23 14:42 | 日常